「まずは弾いてみないと!」という名言で私の心をぐっと掴んだH先生に対する敬意は、最近、深まるばかりでございまして。 そんなH先生がわたくしに新しい指示をくださったのは、数日前のお話でございます。 「シロイさん、新規に10人、異性の友人を作りましょう」 「じゅ、じゅうにんて!」 私は思わずうめきました。 「同性の友人だって、これから10人は難しいのに!」 「本当の友人である必要はありません」 H先生は重々しい口調で続けました。 「知り合い程度で構わないのです。一緒にごはん食べに行ってもいいかなくらいの人間であれば」 「はあ……それならば若干、難易度は下がっているように思えますが」 「いいですかシロイさん、今あなたは、自分の選択肢が狭まったように感じているのではありませんか? だから結婚相談所に登録だの、尼になるだの言い出している」 「ええまあ、だってもうトシがトシですんで」 「そういう状態の