15日に日本は戦後75年を迎える。戦争により、310万人が命を落としたといわれ、国土は焦土と化したが、その体験を語れる人は高齢化が進み、少なくなってきている。 後世に伝えるべき記憶が風化しつつある今、プロ野球中日で投手として活躍した杉下茂さん(94)は「人の未来を奪う戦争は、何があっても二度と起こしてはならない。あのときのことを言葉にして残しておくのが、生き残ったわれわれの役目でもある」と本紙のインタビューに応じた。 杉下さんは1925(大正14)年東京生まれ。野球が大好きだった少年は帝京商(現帝京大高)を卒業後、中国に出征を命じられ、上海近郊の捕虜収容所に収容された経験を持つ。海軍に入営した兄・安佑(やすすけ)さんは特攻機に乗り、沖縄沖で亡くなった。終戦から四分の三半世紀。戦争に翻弄(ほうろう)された一人の野球少年の記憶に耳を傾けた。(聞き手=編集委員・谷野哲郎)