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ブックマーク / book.asahi.com (10)

  • カール・シュミット「政治的なるものの概念」 近代の逆説直視「敵か友か」|好書好日

    Carl Schmitt(1888~1985)。ドイツの法学者・政治学者 写真:Ullstein bild/アフロ 大澤真幸が読む 「政治に固有な区別は、敵、友(清水幾太郎訳では『味方』)という区別にある」。書の中心命題である。書は、まず一九二七年にベルサイユ体制(第一次大戦後の国際秩序)への批判の意味もこめて発表され、一九三二年に大幅に改訂された上であらためて出版された。 シュミットによれば、政治の最も重要な任務は誰が友で誰が敵かを決断することにある。敵は、物理的手段を用いて殺害する可能性もある他者のことなので、この政治概念には不穏な含みがある。この概念から普通に連想されるのは、君主や主人が臣下に「敵を倒せ!」等と命令している姿だろう。するとシュミットの政治観は前近代的で保守的なものだと思いたくなる。しかしそうではない。 まったく逆に、この政治概念は、近代性ということをまじめに純粋に

    カール・シュミット「政治的なるものの概念」 近代の逆説直視「敵か友か」|好書好日
  • Riverside Reading Club feat. 滝口悠生(1) 作家とは、マイクで音を拾う録音技師の仕事に似ている?|好書好日

    (左から)Lil Mercyさん、ikmさん、滝口悠生さん 【Riverside Reading Club feat. 滝口悠生】 作家とは、マイクで音を拾う録音技師の仕事に似ている? 「この時間に何の意味が」みたいな瞬間を、ないことにしたくない 小説における「フロー」は内容と同じくらい重要だ 植一子さんに薦めてもらった Lil Mercy:自分の地元は西武線池袋線沿線で、滝口さんもそっちの方だとを読んで感じていて、今日の東長崎も『高架線』の場所ですけど、勝手に親近感を感じてました。 滝口:あ、同じ沿線育ちなんですね。それは奇遇な。たぶんこの記事を読んでる人は「なんでこの組み合わせ?」って思うと思うんですけど、もともとは(写真家の植)一子さんがきっかけなんですよね。 ikm:そうです。以前、一子さんと下北沢のフリーマーケットで、たまたま2人で店番するタイミングがあって、一子さんから「

    Riverside Reading Club feat. 滝口悠生(1) 作家とは、マイクで音を拾う録音技師の仕事に似ている?|好書好日
  • 「神憑り軍人」たちは何を信じたか 藤巻一保さん「戦争とオカルティズム」インタビュー|好書好日

    藤巻一保さん=撮影・北原千恵美 藤巻一保(ふじまき・かずほ)作家・宗教研究家 1952年、北海道生まれ。中央大学文学部卒。編集者を経て著述活動に入る。東洋の神秘思想、近代新宗教に関する著作を数多く手がけている。主な著書に『密教仏神印明・象徴大全』『役小角読』『秘説 陰陽道』『愛と呪法の博物誌』『偽史の帝国 “天皇の日”はいかにして創られたか』など。 異常な時代の正体を明らかにしたかった ――藤巻さんの『戦争とオカルティズム 現人神天皇と神憑り軍人』は、陰謀論や超古代史などのオカルトに魅了された旧日軍の軍人たちを通して、日を〈聖戦〉へと導いたイデオロギーに迫った異色の戦争裏面史です。執筆のきっかけを教えてください。 若い頃から秘教的な世界に興味があって、長年その分野のを書いたり編集したりしてきましたが、一方で日は神の国であるという信仰に支えられた明治から昭和までの日についてもず

    「神憑り軍人」たちは何を信じたか 藤巻一保さん「戦争とオカルティズム」インタビュー|好書好日
  • 円城塔さん「怪談」インタビュー 「直訳」で浮かび上がる不思議の国・日本|好書好日

    円城塔さん=撮影・有村蓮 円城塔(えんじょう・とう)作家 1972年北海道生まれ。2007年「オブ・ザ・ベースボール」で文學界新人賞、12年「道化師の蝶」で芥川賞、17年に「文字渦」で川端康成文学賞などを受賞。著書に『Self-Reference ENGINE』『屍者の帝国』(伊藤計劃との共著)『シャッフル航法』『文字渦』『ゴジラ S.P』など。 ホーイチはヘイケ・グレイブヤードでビワを激しくプレイする ――円城さん訳の『怪談』は、日人に長年親しまれてきたラフカディオ・ハーンの名作に、「直訳」という手法で新たな光を当てた一冊です。まずは翻訳にいたる経緯を教えていただけますか。 たまたま原文で読んでみたんですよ。2013年にアメリカに行くことになって、無駄な抵抗として機内で英語でも読んでおこうかなと。なぜ『怪談』を選んだのかは忘れましたが、大した理由はなかったと思います。ところが読んでみた

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  • 「翻訳」を考える ときに透ける、支配の構図 鴻巣友季子〈朝日新聞文芸時評22年6月〉|好書好日

    青木野枝 玉響1 この10年、英米における翻訳への関心の高まりを感じてきた。ブッカー国際賞など訳者も対象にした文学賞が整備され、多くの翻訳出版社が台頭した。日でも翻訳に関する重要書が次々と刊行されている。ローレンス・ヴェヌティ『翻訳のスキャンダル』の待望の邦訳(秋草俊一郎/柳田麻里訳、フィルムアート社)もその一つだ。 米国人の著者が1990年代に打ち出した「同化・異化翻訳」という概念は現在、世界文学論の必須用語である。そこには帝国主義的な支配関係の縮図が見てとれる。同化翻訳とは、元々その言語で書かれたように読みやすく訳すことで、異質なものを自文化の中に呑(の)みこんでしまう横暴さも併せ持つ。異化翻訳は原文の特性を生かすため読みづらくもなるが、他文化への尊重がある。 彼のもう一つ有名な概念は「翻訳者の不可視化」だ。言語強者の英語圏では、読者は外国のものを敬遠するという思い込みや、翻訳はオリ

    「翻訳」を考える ときに透ける、支配の構図 鴻巣友季子〈朝日新聞文芸時評22年6月〉|好書好日
  • 「素人」が「投稿」し、自ら動員される参加型ファシズム 大塚英志『大政翼賛会のメディアミックス』|じんぶん堂

    記事:平凡社 書籍情報はこちら 「翼賛一家」というまんがが、戦時下にあった。昭和十五年末から、多くの新聞、雑誌に連載され、単行もいくつか出た。レコード化、ラジオドラマ化、小説化などもされた。これは今のことばで言えばメディアミックス作品である。 書はこの「翼賛一家」のメディアミックスについて考えるものである。(中略) 「翼賛一家」が戦時下における政治的動員の手段として意図され、仕掛けられた「メディアミックス」であった点は書で検証していくが、それまでの多メディア展開と異なる点が大きくいって三つある。 一つ目は、これがあらかじめ多メディア展開を想定したものである、ということ。つまり、最初から「メディアミックス」という企画であったということ。「翼賛一家」の場合、同名のまんがなり小説なり、何かまず一つのメディアで「原作」に相当する作品が大ヒットし、その人気に便乗する形で二次的にアニメーションや

    「素人」が「投稿」し、自ら動員される参加型ファシズム 大塚英志『大政翼賛会のメディアミックス』|じんぶん堂
  • Riverside Reading Clubが語る 古い価値観を現代の視点でアップデートする大切さ|好書好日

    はらだ有彩「日のヤバい女の子」 Mau:『日のヤバい女の子』はikmくんが教えてくれました。めちゃくちゃ面白い。昔話に出てくる女の人たちを現代の感覚で捉えたらどうなるかっていうですね。今までにない視点。ギャグとしても読めるけど、フェミニズム的視点としてもすごく考えさせられる。 Lil Mercy:このには(昔話は)基的に男性の視点で書きすぎだろっていうステイトメントがあって、それを今の視点でゴリゴリに突っ込んでいく話ですよね。 Mau:伝説って言い伝えだから、そっくりそのまま吸収してきたけど、その価値観を突き崩されるような。例えば、秋田県の田沢湖に「たつこ姫伝説」という話があるんですよ。たつこという絶世の美女が、自らの美しさに固執しすぎて龍になってしまう、という。 Mau Sniggler(マユ・スニグラー)。ライター、デザイナー、DJとして活動中。Shoko & The Aki

    Riverside Reading Clubが語る 古い価値観を現代の視点でアップデートする大切さ|好書好日
  • 噂の読書家集団Riverside Reading Clubが新連載 「BOOK GIVES YOU CHOICES」の名前に込めた思い|好書好日

    Lil Mercy(りる・まーしー) 1979年生まれ。Riverside Reading Clubの中心人物。アンダーグラウンドなヒップホップからハードコアパンクまで多様な音楽を届けるレーベル・WDsoundsも運営してる。昨年J.COLUMBUS名義でアルバム「WAVES, SANDS, & THE METROPOLIS」をリリースした。またPAYBACK BOYSのヴォーカリストとしても知られている。 ケン・ブルーウン「酔いどれに悪人なし」 ikm:連載のタイトルを「BOOK GIVES YOU CHOICES」にしたいと思っていて。英語は自信ないけど、綴りもたぶんあってるはず(笑)。意味は「は選択肢をあたえてくれる」みたいな感じですね。これはアイルランドの作家のケン・ブルーウンの『酔いどれに悪人なし』という小説からの一節です。酒と読書が好きな主人公の探偵が、子供の頃にを読むこと

    噂の読書家集団Riverside Reading Clubが新連載 「BOOK GIVES YOU CHOICES」の名前に込めた思い|好書好日
  • 「紛争でしたら八田まで」田素弘さんインタビュー 「知性」と「地政」で紛争解決するユニークなヒロイン|好書好日

    文:吉川明子 写真:斉藤順子 田素弘(でん・もとひろ)漫画家 1976年生まれ。東京都出身。アパレル、広告、webデザイン・ディレクション業を経て30代後半で脱サラ。『定時退社でライフルシュート』で「第1回THE GATE」一色まこと賞受賞。初連載『紛争でしたら八田まで』を43歳で開始。 半年間のイギリス滞在が影響 世界を股にかけて活躍する主人公といえば、漫画では『ゴルゴ13』のデューク東郷、『MASTERキートン』の平賀=キートン・太一、映画では「007」シリーズのジェームズ・ボンドと男性が主流だ。しかし、『紛争でしたら八田まで』の主人公・八田百合はサラサラのロングストレートにメガネとミニスカート姿が定番の女性。職業は地政学コンサルタントで、言語、文化歴史、宗教、政治、経済、軍事とあらゆることを頭に詰め込んで依頼に臨むが、どこに行っても浮きまくりで“ビッチ”扱いされてしまう、という異色

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  • 司馬遼太郎×『ゲーム・オブ・スローンズ』=『竜女戦記』?  破格の歴史ファンタジー漫画が登場!|じんぶん堂

    記事:平凡社 『竜女戦記 1』(2020年5月22日発行)三匹の竜が住まう国・陀国。戦の絶えないこの国で、 また一つ、新たな争いが勃発する。国を追われた「たか」は、家族の命運を背負いながら、 この世界にどう立ち向かうのか!? 主婦が天下を取る、壮大な歴史ファンタジーの幕が上がる! 書籍情報はこちら 世界観のあるエンタメの作り方とは ──今回は、初めて歴史をテーマにした作品に挑戦していますね。 子どもの頃から世界史が好きで、歴史的な事物を描きたいという気持ちはずっとありました。大学で文化人類学に進んだのも、世界史好きの延長で、異なる文化世界、壮大な人類史のロマンに惹かれた、ということがあります。50歳をすぎて、当に自分の描きたいものは何かを考えた結果、やっぱり歴史を描きたいという気持ちに戻ったと言えます。 ──今回の『竜女戦記』では、過去の歴史を素材としつつ、ファンタジーを絡める発想が面白

    司馬遼太郎×『ゲーム・オブ・スローンズ』=『竜女戦記』?  破格の歴史ファンタジー漫画が登場!|じんぶん堂
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