現在、世界は無上の喜びに満ちている。その源泉にあるのは、技術=芸術の大いなる進歩である。「わからない」ことは、手元の入出力デバイスにインプットすれば、膨大な答えが映し出される。表現技術=アートは、人々のニーズに合わせて多彩な癒しと娯楽と刺激を提供する。管理技術は、細やかに計算された安心をもたらし、グローバルな国際会議さえ安全に遂行していく。こうして技術=芸術は隅々まで行きわたり、人々の「情」(感情、情報、情け)を飼い慣らして、人=材を集め立てている。人間は、宗教や思想が違っても、合理的な選択によらなくても、デバイスとなって連帯していける生き物なのである。その結果、シロもクロも交じり合って、ひとつの無限にグレーな世界が現れてくる。しかし、そうした多様性の連帯を拒否し、世界にシロ・クロをつけようとする者がいる。その者は、「情」によって打ち破ることができない「無情」の者である。屹立するシロ・クロ