「一晩だけでもゆっくり休んでや」。日雇い労働者が多い大阪市西成区で、簡易宿泊所(簡宿)のオーナーらが20年以上続けてきたボランティアが今冬、一つの節目を迎えた。宿に困った労働者らに無料で1泊してもらう取り組みで、12月初旬で利用者が延べ1万人を突破した。労働者らと共に歩んできた西成の簡宿。「地域への恩返し」と語るオーナーらは今晩も暖かい部屋を用意している。 無料提供が始まったのは路上で生活する日雇い労働者が多かった1999年。大阪万博があった70年代の西成には約2万人の労働者がいたとされるが、90年代のバブル崩壊で多くの人が職や住居を失った。大阪市立大の98年の調査で市内には8660人の路上生活者がおり、多くは西成に集中していたとされる。