アートにおける「政治的なもの」には、2つのレベルがある。 ひとつは、作品が特定の政治的立場を表明していたり、ある政治的メッセージを明示的に伝えているというようなレベルである。多くの場合作品が「政治的」と呼ばれるのはこのレベルにおいてである。そのメッセージは現政権への批判、マイノリティーの権利主張、社会的暴力の告発、反グローバリズム、エコロジー、フェミニズム等々さまざまであるが、それらのいくつかを組み合わせたり、そこに作家の個人的体験を織り込んだりしていくらでも複雑化することができ、それによって単純な政治的発話ではないもの、つまり「アート作品」らしいものにすることができる。 こうしたレベルの「政治的なもの」は、いわば社交のために必要なのである。それはちょうど、たくさんの人々が集まるパーティのような場所でお互いにおしゃべりをするためには、その人の所属や肩書きが必要なのと同じことだ。もちろん所属