僕の住む町じゃ空が落ちてくる。 この町は田舎らしい田舎で、つまり何もない町だ。大したものとか見るべきものとか、そういったものは。 ただ一つ特徴と言えるようなものを挙げるとしたら、Y町という名前――イニシャルではなく正式名称で、僕たちの保険証にアルファベットを記入するために、断固ウガイ?とかいうおっさんが会社を立てたとかなんとか――その由来となった、年季の入った櫓が駅前広場にある。根元を地面に突き立て、空に向けて大きく開いた先端を二つ結んで、日本古来の製法で作られたゴムっぽいものが垂れ下がっている。 想像しやすいよう似たものを挙げれば、スリングショット。あれをアホみたいにでかくして、塗りたくられた漆でぬらぬらしているもの。そう思ってもらえばいい。 年に一度の夏祭りで、僕たちは町一丸となって、女の子を空にぶっとばす。 落ちてくる空を、蹴っ飛ばして弾き返すために。 隣の娘さんである八智子さんが、
![降臨賞非応募作品 『キャッチャー・イン・ザ・ワイ』 - 生首の『・・・・・』](https://cdn-ak-scissors.b.st-hatena.com/image/square/a1249ee1ba425ef3c94283466a8a6fc2eb0fb059/height=288;version=1;width=512/https%3A%2F%2Fimages-fe.ssl-images-amazon.com%2Fimages%2FI%2F41GdBouG9QL._SL160_.jpg)