本書は、古代での無文銀銭の誕生から現代までの日本の通貨史が書かれている。時代区分により、全四章で構成されている。 第一章 銭の登場 <古代~中世>冒頭にて、貨幣の定義として、経済学の教科書によく書かれている「交換手段」、「価値尺度」、「価値貯蔵手段」に加えて、債務決済や贈与、納税など社会的義務に基づく「支払手段」が挙げられている。(P.4) 日本初の「国定貨幣」である富本銭の前には、民間では、無文銀銭が存在した。無文銀銭は額面が大きく、庶民が使うものではなかったようだ。 天武天皇の時代に、日本最古の銅銭である富本銭が製造された。富本銭は、以前には厭勝銭(吉祥の文句や特殊な図像を刻んで、縁起物または護符として所持した銭)だと考えられていたが、今の学説ではそうではないという説が優勢のようだ。ちなみに、本書の二十一年前に発行された東野浩之『貨幣の日本史』(朝日選書)だと厭戦銭説を採用している。富