理論言語学者が書いた生成文法の立場からの認知科学入門の教科書として悪くはない。それなりに読み物にはなっているとはいえ所詮は教科書なので、本当の入門者には教師による補足無しでの理解は難しいかも。前半は普通に認知科学入門だが、後半は認知科学の深い問題に入り込んでレベルが上がるので、所詮は教科書だと侮る事はできない。 日本では認知科学の下位分野(言語学や心理学など)の本はよく見かけるが、学際領域としての認知科学全体を対象とした本は少ない。たとえあっても、せいぜい様々な分野の成果を寄せ集めただけものも多い。単に成果を寄せ集めただけでは認知科学と称する意義が見出せない。この著作は生成文法の立場から心の計算理論としての認知科学の全体像を示してくれるよくできた本だ。 認知科学入門といってもこの本はタイトルから推測されるように、認知科学的な言語研究からの解説が中心となっている。しかしそれは著者が理論言語学