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2023年12月19日のブックマーク (2件)

  • 草葉の読書記 |ジューディア・パール、ダナ・マッケンジー『因果推論の科学』

    仮想的な現実を思い浮かべ、それを目の前に存在する現実と比較できなければ、その機械はチューリングテストに合格しない。そうした機械では、人間を人間たらしめている最も基的な問い、つまり「なぜ?」の問いに答えられないのだ。私はそれを異常事態とみなした。 そのような自然で直観的な問いが、当時最も進んでいた推論システムの手に負えないとは、まったくの予想外だったからである。 この異常事態に悩まされているのは人工知能(AI)の研究者だけではないと知ったのは、あとになってからのことだ。この世で最も「なぜ?」という問いを大切にしなくてはならない人々――つまり科学者たちだ――は、その問いを発すること自体を否定する統計学的な文化の下、大変な苦労を強いられていた。もちろん、科学者たちは非公式には「なぜ?」という問いを発してきた。 しかし、それを数学的な解析の対象にしたいと思えば、どうしても相関関係の問いへと変換し

  • 草葉の読書記 |イアン・ハッキング『記憶を書きかえる』

    濃密な読書だった。最後の方になって著者の主張が分かった。そこまでは苦しい読書だった。 amazon読書記掲載。 ---------------------------------------------- これは記憶についての哲学のだ。何よりも、著者ハッキングはカナダの有名な科学哲学者である。確かに書は、精神分析がいかに受け入れられてきたか、受け入れられているかについて詳細な記述に溢れている。しかし書の目的は精神分析の紹介でも、その受容史でもない。また、精神分析の批判や論難、悪口を主としたものでもない。著者の目的は最後の方になってようやく姿を現す。その目的を理解しないなら、書を誤読する可能性は高い。 ではハッキングの目的とは何か。それは二点ある。 一つは、精神分析の登場により、記憶が人格の性を構成するものとなったことを示すことである。それ以前は、魂(soul)が人格の性だった