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2023年12月18日のブックマーク (3件)

  • 草葉の読書記 |イアン・ハッキング『数学はなぜ哲学の問題になるのか』

    哲学者たちは、数学について少しでも考えたことのある他の人々と同じように、「数学」を当たり前のものとして受け取る傾向がある。われわれは、ある問題、予想、事実、証明のアイディア、一片の推論、定義といったもの、あるいはある専門分野そのものをまったく無造作に数学的なものとして認識するが、それがなぜなのかを反省することはめったにない。[...]だが、現実の数学者たちが取り組んできたこれほど多くの異なる話題が即座に「数学」として認識されるのはなぜなのかという素朴な問いを、われわれは遠ざけてきたのではないか。(p.52) 分量的にも内容的にもヘビーな一冊。ハッキングがそのキャリアを概括するように数学の哲学について書いている。アプローチは著者独特のもの。普通の分析哲学的な議論を期待して読むと、とりとめもない議論をやっているように見える。著者が論じるのは、ある論点が成立している、あるいは成立してきた状況であ

  • 草葉の読書記 |照井一成『コンピュータは数学者になれるのか?』

    数学基礎論についての実に素晴らしい一冊。このようなが読めることはとても幸運だ。数学基礎論や計算機科学は極めて面白い問題がたくさんあるのだが、入り口のハードルが高いこともあってなかなか平易なはない。第一線の研究者がこのレベルの分かりやすいを出すのは素晴らしい。 タイトルからはいま流行りの人工知能の話に見えるが、そうではない。人工知能は実際的にどのように知能を作っていくかという話。このは知能と呼べるものは理論的にどのようなものか、そしてそれが理論的にどこまで実現可能かという話だ。知能に対する理論的限界の話といえば、ゲーデルの不完全性定理やP=NPの話がある。これらを解説したは多い。だが、著者が正しく言うよう、これらの定理の否定的で悲観的な解説が多い。実際には肯定的な研究が数多くあるのだ(p.8)。 書は数学基礎論や計算機科学における、理論的限界を巡る肯定的な研究を数多く扱っていく。

  • 草葉の読書記 |田中一之編『ゲーデルと20世紀の論理学 (2)完全性定理とモデル理論』

    シリーズの第二巻だが、これは良質な教科書だ。書は三部に分かれている。一階述語論理の完全性定理を扱った第一部。モデル論の初歩を扱った第二部。そして、主に内包的文脈に関する言語哲学を扱った第三部からなる。 第三部はゲーデルの背景となる論理学史が少し触れられているが、主眼はそこではない。内包的文脈の論理的扱いを巡った学説紹介。ゲーデルの完全性定理とはあまり関係ない。筆致もこの著者のいつもの調子。以前のような極端な無味乾燥は和らいでいるが。 第一部、第二部はかなりよくできた教科書だ。どちらもすっきり書かれているし、初学者向けに証明も詳しく書いてある。練習問題が(第一部は特に)無いのが教科書的ではない。特に第二部は驚異的。モデル論についてはそもそも日語のもほとんどないのだが、この第二部はクリアだ。とても面白かった。短いとはいえ、ultraproduct, back-forth argument