《書評》 兵藤 釗著 『日本における労資関係の展開』 評者:二村 一夫 1 「大河内理論」の変遷と本書の成立史 兵藤釗氏が『経済学論集』などに発表された論文を大幅に補正し、新たな論稿も加えて、『日本における労資関係の展開』と題する一書をまとめられた。これまで「理論仮説」や「思いつき」は少なくないが、実証研究の名に値するものがほとんどなかったこの分野で、豊富な史料に裏づけられた本書は、ひさしぶりに、ずっしりとした手ごたえを感じさせてくれた。兵藤氏とほとんど同時に、ほぼ同様な問題意識をもって日本労働問題研究の道に入った私にとって、この大著の重みはひときわである。 兵藤氏と私がほぼ同様な問題意識で出発したというのは、本書の〈はしがき〉で知ったことである。ここで兵藤氏は自らの研究の足どりをたどっておられるが、その冒頭で、つぎのように述べておられるのである。 「もともと、私がこのような歴史研究に足を