記録よりも、記憶に残る名選手。例えるならば数よりも飛距離にこだわるホームランバッター。それがローマンエンパイアという馬だった。 出遅れて向こう正面で14頭をゴボウ抜きした新馬戦。後方に待機し4角手前からロングスパートを決めたさざんか賞。いきなりの距離延長に戸惑いながらも同着に持ち込んだ京成杯(G3)。そのどれもが、見るものの印象に残るレースだった。しかし、その京成杯(G3)を最後にローマンエンパイアは輝きを失っていく。 「能力は高かったと思うけど、よく分からない馬でしたよね」というのは生産者の中島牧場、中島雅春さんだ。「今にして思えばですけど、自分としては2戦目のさざんか賞(1400m)が一番強かったと思っています。母親がスピード馬でしたし、兄姉もそんなタイプが多かったから、やっぱりあれくらいの距離があっていたんじゃないかなって。でも2000mの大阪城Sも勝っているし、1800mのエプソム