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ブックマーク / honz.jp (12)

  • 『全電源喪失の記憶 証言・福島第1原発 日本の命運を賭けた5日間』あのとき何があったのか - HONZ

    あの日、自分はどこで何をしていたのか。みんなが語ることができる。それぞれの国の国民には、そんな共通の大事件や大ニュースがあるものです。 かつてアメリカでは、それはジョン・F・ケネディ大統領暗殺事件でした。その後、2001年9月11日の同時多発テロになりました。 いま日で共通の記憶は、2011年3月11日でしょう。東日大震災の発生のとき、どこにいて、何をしていたのか。北海道や九州・沖縄の人にとってはテレビニュースで津波が押し寄せる映像を見たときの記憶が、いまも鮮明でしょう。 東日では、いつ止むともわからない絶望的な長時間の揺れに脅えた時間だったことでしょう。 私はあの日、成田空港に着陸態勢に入っていた全日空機の中でした。アメリカ・ワシントンでの取材が終わって帰国するところだったのです。いったん着陸態勢に入ったものの、機は上空で周回を始めました。「大きな地震が発生し、空港が閉鎖になりまし

    『全電源喪失の記憶 証言・福島第1原発 日本の命運を賭けた5日間』あのとき何があったのか - HONZ
  • 『東芝 大裏面史』巨大企業を崩壊させた原発ビジネスの裏側 - HONZ

    2016年12月26日を境に、東芝の株価は暴落した。443円をつけていた株価はつづく3日間で259円まで下げたのだ。 それまで東芝株の上昇率は年間で70%を超え、日経平均銘柄で第2位を誇るほどだった。その日が誇る優良企業が一気に奈落へと転落したのだ。見得を切る暇もなかった。 この株価暴落はNHKによる巨額損失計上の報道がきっかけだったが、じつは2008年から東芝の原発ビジネスに疑いの目を向けていたメディアがある。月刊FACTAだ。 同誌は、向こう傷を問わない総合情報誌として2006年に創刊された。経済界の巨悪を追う調査報道を得意としているため、新聞や雑誌の経済記者必読誌としてつとに知られている。 書はそのFACTAに掲載された27の東芝関連記事と、編集長である阿部重夫氏が書のために書き下ろした記事で構成された芯のあるだ。収録されている何かの記事を追ってみれば、すでに2010年5

    『東芝 大裏面史』巨大企業を崩壊させた原発ビジネスの裏側 - HONZ
  • 「生物とは何か」を問い直す──『生物はウイルスが進化させた 巨大ウイルスが語る新たな生命像』 - HONZ

    『巨大ウイルスと第4のドメイン』を筆頭に魅力的なウイルス論、入門を書いてきた著者による最新作『生物はウイルスが進化させた』は、「生物」に対する見方を根底から覆す、最新のウイルス研究成果についての一冊だ。多くの野心的な仮説と、確かにそうかもと思わせる検証でぐっと惹きつけ、読み終えた時にはウイルスに対する考え方が大きく変わっていることだろう。 まさにそれによって、「生物とは何か」「ウイルスとは何か」、そして「生物の進化とは何か」を問い直す「コペルニクス的な転回」を余儀なくされる、そんな存在こそが「巨大ウイルス」なのかもしれないのである。 内容的にはいくらか過去作との内容の重複もあるが、ウイルスとは何か、細菌との違いといった基的なところの説明から、従来のウイルス観を覆す巨大ウイルスとは何か、その特異性とは──と話をつなげ、”そもそもウイルスの定義とはどうあるべきなのだろうか”と最終章にてこれま

    「生物とは何か」を問い直す──『生物はウイルスが進化させた 巨大ウイルスが語る新たな生命像』 - HONZ
  • 『「日本スゴイ」のディストピア 戦時下自画自賛の系譜』最近、再び増殖中 - HONZ

    「ディストピア」とはユートピアの反対語。理想郷じゃない場所のことだ。「日スゴイ」ならユートピアなんじゃないの?と思いながら読みはじめると、戦時下に行われたプロパガンダによって洗脳された日人の姿に戦慄させられる。言葉の力は強大だ、プラスに働いてもマイナスでも。 書には昭和初期から終戦までに出版された、当時の「日スゴイ」の中から「日主義」「礼儀」「勤労」など、現代にも通ずる日礼讃キーワードごとに、膨大なを吟味していく。こんなことが大真面目に語られていたかと驚くばかりである。 そもそも「日スゴイ」のネタの原型はどこにあるのか。探っていくと見つかったのは週刊新潮の版元、新潮社が出していた月刊総合雑誌「日の出」であったのだ。 満州事変を契機とする日の国際連盟脱退を受けた「日の出」1933年10月号には「世界に輝く日の偉さはこゝだ」という特別付録が付いていた。地球上に全く孤立無援

    『「日本スゴイ」のディストピア 戦時下自画自賛の系譜』最近、再び増殖中 - HONZ
  • 『自衛隊の闇 護衛艦「たちかぜ」いじめ自殺事件の真実を追って』 - HONZ

    もしも、自らが所属する組織の不正を知ったら、あなたは、その不正を正す勇気を持てるだろうか? 幹部自衛官でありながら、自衛隊組織の不正を、正々堂々と通報した男がいる。彼の階級は、3等海佐(以下、3佐)。「自衛隊は噓をついている」と裁判所に訴えたのだ。 2014年4月23日、東京高等裁判所。21歳の自衛官・Tさんの”いじめ自殺”を巡る裁判の控訴審判決が下された。国に約7300万円の賠償命令。一審の440万円を大幅に上回る遺族側の逆転勝訴判決だった。 この控訴審判決に重大な影響を与えたのが、3佐の存在だ。 そもそも3佐は、一審のときに自衛隊側の弁護士役に当たる指定代理人を務めた人物である。 裁判の経過の中で、自衛隊側は、Tさんが自殺した直後に隊員たちに実施した「直筆アンケート」を「破棄した」と主張し続けていた。しかし3佐は、破棄されたはずのアンケートを目撃してしまった。 「これは一体、どういうこ

    『自衛隊の闇 護衛艦「たちかぜ」いじめ自殺事件の真実を追って』 - HONZ
  • 『地球を「売り物」にする人たち 異常気象がもたらす不都合な「現実」』 - HONZ

    書は、アメリカのジャーナリスト、マッケンジー・ファンクが6年の月日をかけ、24か国とアメリカの十数州を回って書きあげた力作ルポルタージュ、『Windfall』の全訳だ。 巻頭のカラー写真を見るだけでも、著者の取材がいかに多岐広範に及ぶかがうかがわれよう。書は気候変動(地球温暖化)を取りあげるが、それ自体が主役ではない。気候変動が起こっているという確信が深まれば、それを阻止する格的努力がなされるという考え方は、どうやら幻想にすぎなかったようで、人類は気候変動を早急に止めそうにない。 それでは私たちはいったい何をしているのか――それを探り、その過程で人間の性をあぶり出すことこそが、書の主眼であり、その結果は図らずも、自己保存と目先の利益を追い求める、「共有地の悲劇」と、いわゆる「現在志向バイアス」の物語となった。

    『地球を「売り物」にする人たち 異常気象がもたらす不都合な「現実」』 - HONZ
  • 『原子力政策研究会100時間の極秘音源 メルトダウンへの道』 - HONZ

    に暮らす人々は、日における「原発の歴史」をほとんど知らなかった。 原発とは何で、いかに導入されて、いかなる社会的な位置づけをなされてきて、いかなる課題と可能性を抱えながらいまに至っているのか。 それは「不勉強のせい」だけではない。そもそも、福島第一原発事故以前、「原発の歴史」を一般向けかつ体系的、あるいは通史的に整理した人文社会科学系の研究・書物がほとんどなかったからだ。吉岡斉ひとし『原子力の社会史』や武田徹『「核」論』、あるいは反原発運動の記録など一部の予言的な学術研究を除き「原発の歴史」は明文化されることがほとんどなかった。あるのは、特筆すべきできごとに立ち会った関係者の残した文書や、頭の中に眠っている断片的な記録・記憶に過ぎなかった。 その記録・記憶を掘り起こし、歴史に変換する作業が、3・11後、一定程度進んだのは間違いないことだ。安全神話の陰で指摘されていた危険性や、不公正な

    『原子力政策研究会100時間の極秘音源 メルトダウンへの道』 - HONZ
  • 知的興奮、大爆発!『生物はなぜ誕生したのか 生命の起源と進化の最新科学』 - HONZ

    生命がどのようにして誕生し、進化してきたのか?だれもが興味をいだくテーマだ。完全にわかるということはありえない。しかし、あたらしい技術が開発され、あらたな発見がなされ、次第に議論が収斂してきている。全地球凍結=スノーボールアース仮説の提唱者である地質生物学者著者ジョセフ・カーシュヴィンクと古生物学者ピーター・ウォードによるこのは、最新データを網羅してまとめあげられた最高の一冊だ。 原題は A New History of Life。生命の “新しい” 歴史として、三つの視点から生命の誕生と進化が描かれていく。その三つとは『環境の激変』、『単純な三種類の気体分子(酸素、二酸化炭素、硫化水素)』、『生物自体ではなく生態系の進化』。生物そのものよりも、その環境から生命の歴史が読み解かれていく。 我々の考え方というのは基的に保守的だ。だから、現在認められるプロセスが過去にもあてはまる、とする「

    知的興奮、大爆発!『生物はなぜ誕生したのか 生命の起源と進化の最新科学』 - HONZ
  • 『兵士は戦場で何を見たのか』 - HONZ

    2007年4月、ワシントン・ポスト紙の元記者でピュリツァー賞受賞者デイヴィッド・フィンケルは、バグダッド東部にあるラスタミヤという、だれも行きたがらないアメリカ軍前線基地に赴いた。そこは、「すべてが土色で、悪臭に覆われ」、「風が東から吹けば汚水の臭いがし、西から吹けばゴミを焼く臭いがし」、「外に出るとたちまち頭からブーツまで埃まみれになる」場所だった。 2007年1月にブッシュ大統領が、「バグダッドの治安維持とイラクの自由のために」さらに2万人の兵士をイラクに送ると発表したのを受け、カンザス州フォート・ライリーを拠点にしていた第一歩兵師団第四歩兵旅団第十六歩兵連隊第二大隊がイラクに派遣されることになった。フィンケルが赴いたのは、この大隊に密着取材し、大隊の指揮官のラルフ・カウズラリッチ中佐を中心に、戦場における兵士たちの実情をレポートするためだった。 そして書(原題「The Good S

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  • 【映画】『ヤクザと憲法』極道たりとも、法の下に平等なのか? - HONZ

    昨年の山口組分裂騒動を受け、多くのメディアを賑わせた極道の世界。その一方で、ヤクザの総数は今や全国で6万人を切ったとも言われる。もはや絶滅危惧種とも言われ、岐路に立たされるヤクザ達だが、その実態はどのようになっているのだろうか? 報道やフィクションでは目にすることの多いヤクザの世界を、地上波のドキュメンタリーという形で映し出したのが、作『ヤクザと憲法』である。昨年3月に東海テレビで放送されたこの番組は、取材クルーが100日近く密着することでヤクザの日常を描き出した。現在、テレビでは未公開となったカットも追加したものが映画版として再編集されており、いくつかの劇場で見ることができる。 取材を受けたのは、大阪にある指定暴力団「二代目東組二代目清勇会」である。27人の組員を束ねる親分は川口 和秀・会長。「暴力団対策法」制定のきっかけとなった「キャッツアイ事件」の際に殺人容疑などで逮捕されており、

    【映画】『ヤクザと憲法』極道たりとも、法の下に平等なのか? - HONZ
  • 『たのしいプロパガンダ』 大衆煽動は娯楽の顔をしてやってくる - HONZ

    タイトルに違和感を持つ人は多いかもしれない。政治宣伝を意味する「プロパガンダ」と聞けば、権力者を讃える映像や音楽を嫌々に観たり聞いたりする印象が強い。そして、その映像は退屈きわまりなく、楽しいわけがないからだ。 書を読めばその考えは一変する。ナチスはもちろん、欧米や東アジア、そして日でかつて展開されたプロパガンダの実例が豊富に並ぶが、「プロパガンダの多くは楽しさを目指してきた」と著者は語る。銃を突きつけるよりも、エンタメ作品の中に政治的メッセージを紛れ込ませ、知らず知らずのうちに特定の方向へ誘導することこそ効果的だろうと指摘されれば、確かにその通りだ。 中でも、「プロバガンダの達人」として紹介されるのが、北朝鮮の故・金正日。北朝鮮と言えば、将軍様を讃える映画や個人崇拝の歌の数々が頭に浮かぶ。「どこが達人なんだ!」と叫びたくもなるだろうが、金正日の発言からは意外にも硬軟交えて人民を操縦し

    『たのしいプロパガンダ』 大衆煽動は娯楽の顔をしてやってくる - HONZ
  • 『原発事故で、生きものたちに何がおこったか。』もしこの変化が、序章にすぎないとしたら…… - HONZ

    数日前、庭木の枝に小さな鳥の巣を見つけた。お椀型の巣はからっぽで、内側をシュロなどの繊維、外側はコケや地衣類でおおわれ、クモの巣で枝に接着されている。「メジロかな?」可愛らしい緑色の小鳥の姿を思い浮かべて笑顔になりかけたとき、不安におそわれた。コケや地衣類は放射能に汚染されやすいと聞くが、それを巣材に使った小鳥は、どうなってしまうのだろう? そんな疑問をもったとき、書店で見かけたのが書である。子ども向けの写真絵だが、解説もしっかりとしていて、読みごたえがある。著者は山形県在住の写真家で、原発事故で被害を受けた福島県の阿武隈山地にも昆虫調査で足を運んでいた。 書のタイトルを見てまず想像したのは、「放射線を浴びた生物に奇形や生殖能力への影響が出たことがショッキングな写真でたくさん紹介されている」……というものだったが、違った。 テレビ局の記者から「角のまがったカブトムシが見つかっています

    『原発事故で、生きものたちに何がおこったか。』もしこの変化が、序章にすぎないとしたら…… - HONZ
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