横浜の某区にあるビル地下のクラブ『Love Death』では今日も淀んだ空気を震わす音楽が流れ、年端もいかない少年少女を含めた来客達がひしめき合うようにビートへ心身を寄せて人の波を作っていた。 防音効果の低い小さな扉が開くと、パーカーを着た少女がゆっくりと姿を見せる。染色とパーマが客が多い中では珍しい、黒髪のストレート。新しい来客の姿を認めたバーテンダーが、とっくに見慣れていたその少女に声をかけた。 「キュー美、来たんだ。でも今日はエー子のやつも来ているんだよね。お前らすぐケンカしちゃうだろ。できれば今夜は控えてくれないかな」 不安に満ちた表情を浮かべるバーテンダーに、”キュー美”は薄ら笑いを浮かべて答えた。 「大丈夫、今日は”エー子”と揉め事は起こさないって。まあ万が一起こっちゃったとしても、それは多分今日で終わりだと思うから」 そう言うと、キュー美は人波を泳ぐように掻き分けて、ステージ