ハリウッドの脚本家たちが発展させた「三幕構成」は、実用に耐えうるほぼ唯一の物語創作論だ。しかし、シド・フィールドの教科書を読了して最初に感じることは「So what?(だから何?)」だろう。三幕構成はエピソードやシーンの並べ方を決めるためのものであり、個々のシーンの作り方は教えてくれない。 さらに問題は、観客にとってはシーンの配列よりも、個々のシーンのほうが重要だと言うことだ。たとえば「シータと2人きりで話がしたい」とパズーに懇願されたとき、ムスカは何と答えたか。ご存じのとおり、「3分間待ってやる」だ。あまりにも印象深いシーンだが、これが映画開始から何分後のエピソードか覚えている人は少ないだろう。ストップウォッチを握り締めながら映画を見るのは、一部の脚本術オタクだけだ。普通の消費者はシーンの順番など覚えていない。消費者の印象に残るのは個々のシーンそのものだ。 1つひとつのシーンを上手く作れ