ギリシャラブのメンバーでもあった本日休演の鍵盤奏者・埜口敏博は、ライブにおいて独特の存在感を放っていた。特に強烈だったのはライブのハイライトとして度々演奏されていた“たましいの置き場所”でのパフォーマンスだ。血走った眼でマイクを引っ掴み、口上のような独特の抑揚で、それこそ魂から振り絞るような語りとも叫びともつかない声を上げる――そんな埜口のパフォーマンスを鮮明に覚えていただけに、彼の訃報を聞いたときには少なからぬショックを受けた。 『アイラブユー』は京都大学吉田寮などで録音された『本日休演』(2014年)、同郷の岸田繁らから賛辞を贈られた『けむをまけ』(2015年)に続く3作目で、埜口亡きあとに彼らがリリースするはじめてのアルバムだ。本作では遺されたライブやリハーサルの音源が制作に使用されたとのことだが、とにかくあっけらかんとしていて、これまでどおりのユーモアが音にも言葉にも刻み込まれてい