山口 社会において「安全、快適、便利」を作り出す――これが、ビジネスにおける価値の出し方の3つのキーワードです。ある意味、古来からずっと続いてきた普遍的な営みなわけですが、人々の生活を安全で快適に送れるような物質的な基盤の整備が加速したのが産業革命以降でした。素晴しい起業家たちが次々と出てきて、物質的貧困というものを世の中からなくそうと高邁な使命を掲げ、成し遂げてきた。 日本では松下幸之助の掲げていた水道哲学のマニフェストが象徴的です。「生産者の使命」は「生活物資を無尽蔵に提供して貧を除くことだ」という宣言ですが、同様の精神をもった多くの企業が、戦後の焼け野原から、世界が「奇跡のようだ」と驚く日本の復興を成し遂げました。豊潤な生活物資の社会的供給というビジネスの使命は日本においてほぼ達成されたのです。 物質的な豊かさが社会にゆきわたり多くの商品がコモディティ化するなか、たとえば家電の分野で