日本の災害史上最悪の惨事となった関東大震災が起きたのは、1923(大正12)年9月1日。今から85年前のことだ。マグニチュード(M)7・9の地震と台風による強風が重なり、津波や土石流でも甚大な被害を出した。だが、火災被害があまりにも悲惨だったため、「複合災害」としての実像はあまり知られていない。「防災の日」にあたって、関東大震災の複合的な被害実態から、現代の防災につながる教訓を探ってみた。(中本哲也) ◇ 土砂災害による被害が大きかった今年6月の岩手・宮城内陸地震。鹿島建設・小堀研究室のプリンシパル・リサーチャー、武村雅之さんは「関東大震災のときの根府川の土砂災害を思い起こした」という。 関東大震災では、箱根、丹沢などの山間地で多くの土石流や山崩れが発生した。土砂災害による死者は約700人と推定される。最も大規模な土砂災害が神奈川県片浦村(現小田原市)を襲った山津波で、根府川の集落で