アマデウスたち 様々なジャンル、フィールドで活躍する異才にスポットをあてて紹介する。自身の原点となったコト・モノをはじめ、自身が描く夢まで素顔の異才達が登場する。 バックナンバー一覧 丹下健三、磯崎新、黒川紀章、安藤忠雄。日本を代表する建築家の系譜は、隈研吾の出現で流れを変えた。自己顕示という建築的欲望へのアンチテーゼと、工業的イメージから解き放たれた自由がそこにある。 「負ける建築」と呼ぶ。予算や建築条件などの制約をまずは受け入れ、街並みを醸成した自然と歴史に敬服し、思考を巡らせていく。敬愛する英文学者の吉田健一が言う「優雅な諦念」である。 バブル崩壊の傷跡を引きずった1990年代、フィールドを地方に移した。職人一人ひとりの顔が見えるプロジェクトの中で、ゆったりと流れる時間を確認した。2000年に完成した栃木の那珂川町馬頭広重美術館では、裏山の八溝杉でこしらえた格子を、壁に、屋根に配した