2010/07/2900:01 経済を考える勘所−−ワルラスの法則について 飯田泰之 何らかの理論的な思考をもって、現実の問題に当たろうとする。そうすると、経済学にかぎらず、必ずといっていいほど、ある壁にぶつかることになる。 一方、波及経路(なぜそのような結論になるのか)や定量予想(効果を数字で表すとどのくらいになるのか)に答えることのできない基礎的な理論は、素朴であるがゆえに、わずかな前提から結論を導くことができる。 要するに、理論の精緻さと適用範囲は、往々にしてトレードオフの関係にあるということだ。 そうしたなか、ほぼまったく前提を必要とせず、それでいて現実問題への鋭い洞察を与えてくれる「都合のよい理論」もいくつか存在する。 そのひとつが、有名なワルラス法則だ。 ◇「すべての市場の超過需要の和はゼロになる」◇ ワルラス法則は、「すべての市場の超過需要の和はゼロになる」と表現さ