タグ

ブックマーク / d.hatena.ne.jp/kananaka (7)

  • 沈黙の木箱 ―― 二歳のバースデーによせて。 - kananaka日和

    ヒカルちゃん*1にバースデーカード送ったよ、と彼女は笑う。エヘヘと照れたようにほころぶ口元が、目に浮かぶ文字列。今度子供たちも交えてスカイプしよう、うちの子は日語あまり話せないけど。―――だったらヒカルも同じ、と私もすかさず打ち返す。 そうして、ひとしきり互いの近況や育児ネタに興じた後、まるで世間話のようにさりげなく、彼女は「今だから言える話」を切り出した。「あたし、子どもの頃いつも寂しかったんだよねー」と。 想定外だったのは、結婚しても子どもが出来ても、寂しさから卒業できなかったこと。あたしには父がいない。もちろん、一つ屋根の下で暮した生物学的父はいる。育児にも割と協力的な人だったし、子どもに経済的な不自由はさせない人だった。だけどやっぱり、あたしに父はない。 いじめられて「学校に行きたくない」と言ったとき、彼は学校を休ませてはくれたけど、理由を聞こうともしなかった。助けてくれなかった

    沈黙の木箱 ―― 二歳のバースデーによせて。 - kananaka日和
    norton3rd
    norton3rd 2013/03/15
    ウチのお袋の名言に『ヨソの子は早よ大きなる』とゆーのがある。それにしても相変わらず素敵な文章だな。人の親になったことのない俺でも涙が出てきた
  • 鞄の中には。 - kananaka日和

    私のカバンは某ネコ型ロボットと同じ四次元仕様である。その割にとにかく重くかさばり、また中身がすぐ行方不明になるアナログ的要素も併せもつ。ある日、いつものとおりゴソゴソしていると、見かねた友人がカバンの片紐を持っいてくれるとのたまった。 誓って言うが、「重いよ、ホント重いんだから、気をつけて。」と何度も繰り返したのだ。にも関わらず、彼女はまるでコントのボケ役のようにガクンと肘から先を落とし、ご丁寧にたたらまで踏んだ。 「げ、何入ってるの、この中!?」 やっとの思いで、お目当ての万華鏡*1を引張り出すことに成功した私は、カバンに突っ込んでいた顔を上げる。 「何って―――んと、生活用具一式?」 たっぷり数秒視線を泳がせた友の薄い耳たぶに唇を寄せ、さらに言葉を繋ぐ。 「だからね、私、いつでも家出できるの(笑)」 「い・・家出?」 そこまで言うと、酸欠の魚のような顔でオウム返しをする彼女から、素早く

    norton3rd
    norton3rd 2011/04/26
    『手酌同盟を結んでいる間柄ゆえ』あ、俺も連盟に参加する。サラリーマンをン十年やっても、いまだに『お酌』って、でぇっ嫌いなのだ煜/↑あ、俺の鞄には細引とLEDヘッドランプと五徳ナイフが
  • 子猫がいねむりをしてるまに。 - kananaka日和

    ヒカルよ、今まで貴女に黙っていたことがある。実はハハにはヒミツがある。貴女に話すのはまだ少し早いかもしれないが、よい機会だ、今宵はハハの告白を聞いてほしい。 ヒカルよ、貴女のハハには主人(あるじ)がいる。え、そんなはずはないだって? いいやヒカルよ、ハハが寝ても覚めても貴女のそばにいるからとて、油断はならない。貴女が生まれるずっと前から、ハハはその方にお仕えしていたのだから。 ん、貴女の父ちゃんのことかって? いやいや、貴女のチチハハの間には主従関係など存在しない。貴女のチチとハハは姓も違うし、理由(わけ)あって今は住んでいる場所も別々だ。けれどヒカルよ、貴女もよく知るとおり、チチとハハは同じ時代を共に生きると決めた同士であり、戦友であり、貴女の人生の伴走者でもある。そのことに変りはない。 あいにく世間には、そういう二人のことを良く言わない人もいるようだ。この先、貴女のことを可哀相だと憐れ

    子猫がいねむりをしてるまに。 - kananaka日和
    norton3rd
    norton3rd 2011/02/26
    いや何も申し上げることはございません
  • それから光がきた。 - kananaka日和

    2010年12月9日14時33分。 くはっと声にならない声をあげ、カノジョはこのセカイで最初の光を見た。まだ像を結ばぬ瞳を全身の感覚器官で補って、確かに感じとっていた。このセカイの眩(まばゆ)さを、このセカイを充たす音の海を、このセカイに吹く乾いた風を、このセカイに蠢くものの気配を、そしてハハの胎内にいた時に想像もしなかったセカイが、ここに在ることを。 カノジョはもう一度、かはっと小さく咽せ、そうして小さく声をあげてみた。心許ない少しかすれた声で、初めて使う器官の感触を確かめるように。 ワタシはそれを遠くで聞いた。術中の失血量が影響し、血圧が降下し意識が朦朧としていた*1。無影燈の光の中をレーザーメスの白煙と肉を焦がす臭いが立ち、悪心と呼吸困難の中、吾子は苦しくはないかと案じつつも、水底に引き込まれるようにまぶたは重かった。 「そのまま寝ちゃっててもいいよ〜」 若い執刀医*2が、ベテラン看

    それから光がきた。 - kananaka日和
    norton3rd
    norton3rd 2011/01/18
    『ピンと来なかったことばたちと変らぬ顔ぶれ。しかしそれらは湯たんぽのように温(ぬく)い吾子を腕にした今読み返してみると、不思議と胸に迫るものへ変質していた。』
  • 雪を名に持つネコのお話。 - kananaka日和

    雪の情景はいつでも、思春期の哀しみに彩られている。楽しさも嬉しさもあったはずなのに、思い出すのは豪雪に閉された過疎集落と、祖母と変らぬ年齢(とし)の<育ての母>の縮かんだ背に強い訛、そして烈風吹きすさぶ冬の日海の情景ばかり。 今年は寝正月を返上し仕事三昧の年末年始を過ごしていたが、ようやく体が空いた。 「行こう」と思った。かつて過ごした雪国に。―――何故だろう、何故だか不意に*1。 現居住地も気温が0度を超せば「今日は暖かい」と感じる程度には立派な雪国なのだが、かの地の冬はレベルが違う。凍える息、うなる海、肌を貫く強風、網膜を刺す吹雪。ここの冬は<人間>が主体ではありえない。空が、海が、山が、雷が轟音とともに咆哮し、突如裂けた雲間から海原へ落ちるひと筋の光が、束の間の静寂を支配する。 雪上をお腹まで 埋もれながら歩むコナユキ。  実のところ、わたしはかの地での記憶があまりない*2。正確に

    雪を名に持つネコのお話。 - kananaka日和
    norton3rd
    norton3rd 2010/01/08
    『♪いーぬは喜び庭駆け回り、ねーこは炬燵で丸くなる』ばかりではないのか
  • あのひとの棲む国。 - kananaka日和

    神無月も半ばを過ぎた頃、小さな包みが我が家に届いた。差出人欄をあらためると、学生時代にお世話になった今は亡きN先生のお連れ合い、S夫人の端正な筆跡が目に入る。茶色の包み紙をほどくと、はたして中から現れたのは、茨木のり子の『歳月』という詩集であった。 『歳月』は、詩人茨木のり子が最愛の夫・三浦安信への想いを綴った詩集である。 伯母は夫に先立たれた一九七五年五月以降、三十一年の長い歳月の間に四十篇近い詩を書き溜めていたが、それらの詩は自分が生きている間には公表したくなかったようである。 何故生きている間に新しい詩集として出版しないのか以前尋ねたことがあるが、一種のラブレターのようなものなので、ちょっと照れくさいのだという答えであった。 ――p128, 宮崎治「Y」の箱, 『歳月』(2007)花神社 詩人の一周忌に合わせ誕生した遺作集のあとがき―「Y」の箱―を読み、私はこの小さな贈り物の意味を理

    あのひとの棲む国。 - kananaka日和
    norton3rd
    norton3rd 2009/12/11
    『そんな体験を経て大人になった少女は、きっと私だけではないはずだ。』野郎の茨木のり子ファンもここにいるのだが
  • 点火期 -Ignition Period- - kananaka日和

    過日、ある方にメッセージを送った。エールとリスペクト、そしてシンプルな感謝の気持ちを綴りたくて書き始めたはずが、気づけば自分の過去を振り返る内容になってしまった。実は自分のトラウマを、それを一般的に総称する言葉を使って記したのは、これが初めてだった。ただでさえお忙しく、そしてご心労の折に、読みづらい文面を送りつけてしまったことを、却って申し訳なく思う。 (以降、直接的表記は避けていますが、一部の方に不快を感じる記述が含まれている可能性があるので、畳みます。) これまで、私がその総称を使わずにきた理由は、幾つかあって。 一つには私がまだ被害の渦中にいた時代、この言葉は[3字]ではなく、[4字]で総称されることが多かった(注:その言葉は今でも見るのも書くのも苦痛なので、以降、かなり解りにくい書き方をします。)。わずか一字の違いだが、後者の[4字]表記は、間に<相>という字を組み込むことにより「

    norton3rd
    norton3rd 2009/09/04
    圧倒されて言葉が出ない
  • 1