2010年、楽天とファーストリテイリング(以下、ファストリ)が英語を社内公用語にすると宣言し、各所で賛否両論を呼んだ。筑波大学大学院教授である著者も、このニュースに衝撃を受けた者の一人である。英語支配論や言語政策、国際コミュニケーション論を専門とする著者はこの発表に危機感を抱き、両社の社長へ抗議の手紙を送った。 本書は、実際に送った手紙の全文掲載から始まる。その中で、「英語の社内公用語化」の弊害について著者が問題視しているのは主に3点。この3点の理由を明らかにしていく構成で丁寧に論が展開されていくので読みやすい。 まず1つ目めは、「日本語・日本文化の軽視」の問題だ。現在の日本には「英語信仰」が広がっており、その結果「英語偏重社会」が生まれ、日本語や日本文化の軽視が起きていると指摘している。 確かに、昨今の日本人の英語への傾倒ぶりは顕著だ。昇進の基準としてTOEICなどの結果を重視する