銃・病原菌・鉄 [著]ジャレド・ダイアモンド ■歴史の流れと今を再認識する旅 「文明の発展とその災厄が人類の歴史にどうかかわったかを鮮やかに記した名著」(資生堂名誉会長・福原義春氏) 「世界発展の不均等を、著者の深い学識から人類学的に考察し………[もっと読む] [文]浜田奈美 [掲載]2010年11月07日 本格小説 /日本語が亡びるとき [著]水村美苗 【本格小説】時代の光と影描く日本版『嵐が丘』 夏目漱石の未完の遺作を書き継いだ『続明暗』で作家デビュー、そして横書き、英語交じりという斬新なスタイルの『私小説』。作品ごとに世間を驚かせてきた水村………[もっと読む] [文]浜田奈美 [掲載]2010年10月31日 釈迢空ノート [著]富岡多恵子/ 東西/南北考 [著]赤坂憲雄 【釈迢空ノート】折口信夫の原点スリリングに 学者・折口信夫はなぜ、釈迢空の名で詩歌を詠んだのか。その筆名は「出家
ファストファッション クローゼットの中の憂鬱 著者:エリザベス・L.クライン 出版社:春秋社 ジャンル:産業 ファストファッション クローゼットの中の憂鬱 [著]エリザベス・L・クライン 今や私たちの日常生活を覆い尽くしている、「ファスト」な消費文化。規模の拡大と、時間やコストの削減を至上命令として、その伸展は留(とど)まることを知らない。とりわけ目を引くのは、H&MやForever21、Zaraなど世界規模で展開する格安ファッションチェーン(ファストファッション)だ。これは「問題の多い現代の消費文化の縮図」と著者は述べる。 ファストファッションが普及し、衣料品の単価が安くなるのに反比例し、購入点数は増加の一途を辿(たど)っている。アメリカでは、過去20年間で国民一人が年間に購入する衣料品の数は倍になった。それにともない、繊維ゴミの量も約10年で4割増加したという。日本も他人事(ひとごと)
初音ミクはなぜ世界を変えたのか? [著]柴那典 音声合成ソフトウエア「ボーカロイド」の一種として生まれながら、ネット上の不特定多数のユーザー(ボカロPと呼ばれる)に育まれることで、姿かたちを与えられ、幾つもの名曲を歌い、やがてネットを飛び出して様々に活躍し始め、気付けば一種の社会現象を巻き起こしていた「初音ミク」。本書はその誕生から現在に至る歴史を、ミクの開発者や有名ボカロPたちへの取材によって繙(ひもと)きつつ、ひとつの大胆な主張を行っている。それは、ミクが登場した(発売された)二〇〇七年から起こった出来事は、史上三度目の「サマー・オブ・ラブ」だった、というものである。 六〇年代末、アメリカ西海岸で、ヒッピーイズムを背景にして勃興した若者文化のムーブメント、それは「サマー・オブ・ラブ(愛の夏)」と呼ばれた。六九年のウッドストック・フェスティバルが、その頂点だった。それから二十年後の八〇年
自由か、さもなくば幸福か? 二一世紀の〈あり得べき社会〉を問う (筑摩選書) 著者:大屋 雄裕 出版社:筑摩書房 ジャンル:新書・選書・ブックレット 自由か、さもなくば幸福か? 二一世紀の〈あり得べき社会〉を問う [著]大屋雄裕 全ての人間の身体にGPS機能付きのチップが埋め込まれた社会を想定してみよう。GPSとは、人工衛星を用いてその対象が地球上のどこにいるのかを正確に測定するシステムのことだ。つまり、あらゆる人間がいつ、どこにいるのかがつねに測定され、コンピューターに記録される社会である。 こうした社会では、犯罪が起こってもすぐに犯人は特定されるだろう。たとえ殺人犯が遺体からチップを取り除いて犯行を隠匿しようとしたとしても無駄だ。チップが取り除かれたときにそこにいた人間は特定されるからだ。生体反応によって稼働するチップならば、よこしまな人間が自分の身体からチップを取り除いた時点で、警察
■塾講師が教える自己啓発 分野を説明しにくい本だ。ひたすら夢(慶応合格)に向かって努力するおバカなギャルの女子高生さやかを、塾講師の目線から描く。ノンフィクションのようだが少し違う。小説のように、講師と女子高生の会話を軸に物語が進行する。受験する女子高生はひたすら勉強に邁進(まいしん)するが、その夢の動機や挫折の詳細には触れられることはない。 受験メソッド本としての要素もある。有用な教科書のガイド、得点力アップの方法に触れられる。また、聖徳太子を「せいとくたこ」と読むような、おバカなギャルの発言語録としてウケている側面もあるだろう。 だが強いて言うなら心理学の本である。巻末に講師である著者が用いた心理学のテクニックの用語解説が付いている。本書の核はここにある。夢の動機や挫折が詳細に描かれないのもそのせいだ。これは、素直なギャルを、自分のメソッドで引き上げる塾講師の物語なのだ。 学校の教師に
「家族」難民 生涯未婚率25%社会の衝撃 [著]山田昌弘 「パラサイト・シングル」「婚活」といった流行語を世に送り出し、家族問題を検証してきた筆者による新刊。今回のキーワードは、「難民」と穏やかではない。家族とは「自分を必要とし、大切にしてくれる存在」であり、それは経済的・心理的両面のケアをしてくれる人を意味すると筆者は述べる。それゆえ家族を持てない人や家族の支援が期待できない人の抱える困難は極めて大きい。もはや難民と呼んでいいレベル……というのは、決して誇張ではない。 これまで日本社会は、家族を標準単位として、社会福祉等の制度を整備してきた。だが周知のように、現在「シングル(単身)」つまり配偶者のいない人が急増している。しかも、その多くが積極的に選択した結果というよりも、望んでも結婚できない人である点が問題だ。とりわけ男性は所得水準が家族関連行動に直結するため、低収入の場合は「結婚しにく
「草食系」や「さとり世代」――。「最近の若者」とセットで語られるのは、野心や欲望を感じさせない言葉だ。本紙でも昨年8月、作家の渡辺淳一さんと林真理子さんが対談し、若い世代に向けて、ギラギラした野心や欲望の大切さを説いた。いわく、「幸せの原点」「欲望をエネルギーに」。でも、本当に若者って「欲がない」のか。さとり世代に属する作家の朝井リョウさん(24)と、独自の若者論で知られる社会学者の古市憲寿さん(29)に、欲望について語ってもらった。 ■文学賞が全部ほしい理由は 古市 「草食系」だの、「さとり世代」だの言われる最近の若者だけど、欲望って昔と変わったと思う? 朝井 確かに「不便で満ち足りない」って感覚が持ちづらいというのはある気がする。古市さんの著書で、20代の約80%は「現状の生活に満足している」って話があったよね。それってたとえば、おいしいフレンチが高くて食べられなくても、おいしい「フレ
教養としての冤罪論 [著]森炎 人を裁くことには責任がともなう。その責任はこれまで職業裁判官が一手に引き受けてきた。しかし裁判員制度の導入によって、一般市民もそれを引き受けなくてはならなくなった。 これは、もし冤罪(えんざい)が起こったら、その責任も私たち自身が負わなくてはならなくなった、ということを意味する。本書でも述べられているように、冤罪の最終的な責任は捜査機関ではなく、判決を下した裁判官にあるからだ。 冤罪の責任を負うということは、同時に、それを回避する責任を負うということでもある。では、専門的な司法の知識も経験もない市民はどうしたら誤判を回避することができるだろうか。その方法論を示そうとしたのが本書である。 本書の特徴は、戦後日本の主要な冤罪事件を分析して、冤罪が発生するメカニズムを俯瞰(ふかん)的にとらえようとしている点にある。個々の事件を細かく論じるのではなく、冤罪はどのよう
3.11で僕らは変わったか もんじゅ君対談集 著者:もんじゅ君 出版社:平凡社 ジャンル:エッセイ・自伝・ノンフィクション ■3・11で僕らは変わったか [著]もんじゅ君 著者はフォロワーが10万人を超えるツイッターで人気のゆるキャラ。東日本大震災以降、ゆるゆると脱原発への思いをつぶやいてきたもんじゅ君が、震災3年を機に5人の著名人と語り合った対談集。 美術家の奈良美智は「まるで震災をなかったことのようにしようとする、そんな風潮があるんじゃないか」。再稼働への動きが高まるなか、音楽家の坂本龍一は「もっと怒ったり、怖(お)じ気づいたりするべきですね」。再生可能エネルギーがなかなか盛り上がらないのは「まず名前がむずかしいんじゃないですか」というもんじゅ君のつっこみは鋭い。未来を考え、自分を見つめ直すための言葉がたくさんつまっている。 ◇ 平凡社・1680円
世界一素朴な質問、宇宙一美しい答え 世界の第一人者100人が100の質問に答える 著者:ジェンマ・エルウィン・ハリス 出版社:河出書房新社 ジャンル:児童書・絵本 世界一素朴な質問、宇宙一美しい答え [著]ジェンマ・エルウィン・ハリス 子どもたちが投げかけた100個の質問に、各界の専門家(チョムスキー、ドーキンスなど、超豪華!)がまじめに、ときにユーモアを交えて回答した本。「自分だったらどう答えるだろう」と考えをめぐらしても楽しいし、子どもの「なんで」攻撃にさらされたときのあんちょことしても活用できる。 質問がふるっていて、「ミミズを食べても大丈夫?」「ウシが1年間おならをがまんして、大きいのを一発したら、宇宙まで飛んでいける?」など、子どもたちが日々なにを考えて暮らしているのか、よくわかる。 ちなみにミミズの質問に答えているのは、ベア・グリルス(冒険家)。「このひとしかおらん!」と膝(ひ
■「人付き合い」衰退したアメリカ ひとごとでない危機意識で読む コーエン兄弟の映画に「ビッグ・リボウスキ」という傑作がある。主人公は、もてない職がない金がない男たち。金を失ってはボウリング、友達が死んではボウリング……。投げる合間にビールを飲み、だらだらと下らない話をして過ごす。 職業や年収や思想信条が違う人々が、ボウリングチームを作り、地域のリーグで戦い、交流するのは、アメリカで広く見られた光景だった、今までは。本書は、ボウリングリーグを始めとする市民の様々なグループが、衰退の一途をたどっていることを明らかにした衝撃作だ。 冒頭に「昔はよかった、という単純なノスタルジーを避ける」とあるように、本書随一の価値は実証主義だ。翻訳した同志社大准教授の柴内康文さんは取材に「使いやすいデータだけでなく、よく見つけてきたなという資料も掘り起こし分析している。米社会科学の強みだ」と話した。 鍵となる概
福島第一原発を「観光」の核として生かそう――発表時から論議を呼んできた復興構想を、批評家の東浩紀が編著書『福島第一原発観光地化計画』=キーワード=にまとめた。東は以前、3・11後の課題は人々が「ばらばら」になってしまったことだと指摘していた。観光地化には、つながりを再生する狙いも込められていた。 ■ばらばらになった社会 つながり再生する狙い 「震災でぼくたちはばらばらになってしまった」と一昨年9月、東は書いた。低線量被曝(ひばく)の問題を例に、「考えれば考えるほど、ぼくたちは統計と数字の迷宮に囚(とら)われ、確率的な存在に変えられ、そして連帯を失っていく」と指摘している。放射能リスクにきしむ日本社会を映した言葉だった。 昨年9月、東は「観光地化」のアイデアを公表する。 なぜ観光地化なのか。 「悲劇を希望に転換していくためです。僕たちは『あの悲劇があったからこそ今の新しい福島がある』という物
■和食たたえる新鮮な描写 私たちは「外人の眼(め)から見た日本」ものが大好きだ。イザヤ・ベンダサンからポール・ボネに至るまで、この手の本の人気は常に高い(2人とも実は日本人とされるが)。批判にせよ称賛にせよ、彼らの言葉はいつでも私たちの自己愛をくすぐってくれる。誰よりも日本を理解している私、という自己愛を。 しかし意外にも、“外人視点”から我が国の食文化に焦点を絞って書かれた本はこれまでほとんどなかった。著者は英国のフードジャーナリストだが、本書は単なる調査報告書ではない。妻子3人を引き連れての100日間の来日珍道中ものでもある。 東京から北海道へ、京都から大阪へ、そして沖縄へ。B級グルメから超高級の懐石料理まで、一家はひたすら食べまくる。いくつかの食材を除けば、和食は彼らの心を完全にとらえたようだ。 考えてみれば、日本が真に世界に誇りうる文化として、現在「日本食」以上のものはない。味覚の
■「弱い人がなる」のではない 日本テレビの花形ニュースキャスターとして知られた著者が、そのキャリアのさなかに突如としてうつ病を発症してしまう。病院で薬を処方されるが、自分自身で治せると考えて薬を飲まずに放置した結果、こじらせてしまう。実家に戻り、番組を降板し、自室にこもって苦しむ日々が続く。自殺を考え、母親に毒薬を盛られたという妄想まで。最終的に入院して強制的に薬を飲むことで快方へと向かい、社会復帰への一歩を踏み出せたのだった。 これはうつ病をめぐる典型的な物語のひとつだ。しかし本書を読んだ人が気づくのは、明るく元気で仕事もハキハキとこなす著者のような充実した人生であっても、うつになる可能性があるという現実だ。著者はこう書いている。「もともと私は、深く思い悩まずに、とりあえず行動してみるタイプ」「だから、うつ病がよくなってからも、たくさんの人に、『キャラじゃない』『そういうタイプじゃない』
リリース、障害情報などのサービスのお知らせ
最新の人気エントリーの配信
処理を実行中です
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く