『トイ・ストーリー3』の予告を観た時のことは今でも覚えている。あまりに鮮烈で、その後に流れた映画本編の内容が頭に入らない予告は初めてだった。それは一緒に観に行った友人も同じだったようで、映画が終わって食事をしている時も本来観たはずの作品については全く触れずに予告の話で盛り上がっていた。別れというテーマが簡潔に、それでいて明確に表現されている内容はもちろん、個人的にはビデオ特有の粗い映像が憧憬の対象として、取り戻すことのできないものとして表現されているのが新鮮だった。日本のシネマ・コンプレックスではフィルム上映とデジタル上映が混在していた2010年に観られたのも幸福だったのかも知れない。それから2年が経過した今では、予告を観た映画館は全ての作品をデジタルで上映している。 しかし胸を打つ予告を観てしまった者の常として、つい余計な心配もしていたのだった。つまり本編は予告を越えられるのだろうかと。