子ども向けの読み物と大人向けの読み物の中間段階、いわば階段の踊り場のようなものとして、かつてはジュヴナイルというジャンルがあった。アメリカではヤング・アダルト(Y・A)などとも呼ばれる、おもに十代向けの物語である。日本ではその市場を、ある時期から「ライトノベル(ラノベ)」と呼ばれる軽い読み物が席巻するようになった(この分野については本連載の共著者である前島賢さんの回で詳説されている)。 1990年代以後、こうした「ラノベ」市場に向けてさまざまなレーベルが生まれ、表現ジャンルとして細分化していった。そこから傑出した書き手が幾人も登場し、広い読者に向けた普遍性のある物語を紡ぐようになっていく。 そうした書き手の代表格として、今回は米澤穂信と桜庭一樹を取り上げたい。 やる気のない「名探偵」が成し遂げた偉業 米澤穂信は平成13年、第5回角川学園小説大賞ヤングミステリー&ホラー部門奨励賞を受賞した『