また一人、障害者が親に殺された。知的障害のある40代女性が、自分が亡くなった後不憫だからと60代の母親に殺されたのだ。入所施設(自体を善しとはしないが)もデイサービスもホームヘルプやガイドヘルプもなかった時代ならいざ知らず、親が元気なうち、というより小さい時から地域で共に育ち、地域の学校で共に学び、いろいろな支援やサービスを使いながら地域で生活する関係をつくっていたら、親だけで抱え込み、親亡き後を案じてわが子に手をかける悲劇は避けられたのではないか、そのために制度やサービスを整えてきたのではなかったか、と残念でならない。 施設や福祉サービスがない時代ならいざ知らず……と書いたが、実際60年代、70年代は頻繁に「障害児殺し」事件が新聞紙面を覆っていた。自宅分娩が当たり前だった60年代以前は、お産婆さんが障害があると分かると、母親に見せる前に口をふさぎ窒息させて死産だったと告げていたとも聞く。