「レナードさんに嫌われてしまいました。 私はやり方を失敗したようです。 消費できる価値も、少し心許なくなりました」 叩かれたり折られたりした部分を治したクリスが、 物憂げな顔をして、フロントガラスの向こうを眺めている。 彼女の目尻にはしわが浮かぶようになってきた。 その横の運転席に座っているチェシカは、 予報紙をつぶさに確認しながら相槌を打つ。 「愛というものは与える者の他に、 受け取る者が必要です。 レナードさんは受け取る準備が整っていません。 どうすれば彼に受け入れてもらえるのか……」 「地道にやっていくしかないわね。 私だってレナードに名前で呼ばれるようになったの この街に来てからよ。ほんの少し前にようやく」 「まあ……打ち解けたきっかけをお伺いしても?」 「だってこの街で『おい悪魔』なんて呼んだら 通りすがりの三人にひとりは振り向くに決まってるもの! そしてほとんど毎回、望みもしな
![第9話 楽園『イースト・スラム』 - 悪漢どもと悪魔達の街(沓石耕哉) - カクヨム](https://cdn-ak-scissors.b.st-hatena.com/image/square/30e3b346c04d7b159231e056ce1ed0b56c4f129f/height=288;version=1;width=512/https%3A%2F%2Fcdn-static.kakuyomu.jp%2Fworks%2F16816700427063563218%2Fogimage.png%3Fg7UaRuFQv5GmdGOjRnvVmB4HB2I)