格差社会、つまり一見すると豊かな先進国における新しい貧困は、それまで当たり前に可能だったものが不可逆的に失われる形で進行する。私たちが日々目撃している限りでは、その貧困は社会から「無駄なもの」を省くという努力がますます貧困を促進するという皮肉な矛盾によって加速する。 この矛盾はシンプルに、「貧しい人が増えれば社会は貧しくなる」にも関わらず、社会は「貧しい人を増やすこと」を歓迎せずにはいられない、という形で発現する。 この新しい形式の貧困の最大の特徴は、貧困者それ自体が貧困者を憎悪する点にある。たとえばアメリカの白人貧困層は、格差社会やその上流にある富裕層ではなく、自分たちの仕事を奪う移民(つまり自分たちと同等の、あるいはそれ以上の弱者)を差別し、むしろ社会保障を縮小する新自由主義的な文脈での「保守派」に転じる。日本でもこのような光景は見るに事欠かない―――生活保護叩きや貧困者の救済を訴える