生物の「かたち」は個体の持つ遺伝情報の発現に加え,その個体が発生,生長する環境から受けた影響の総和としてとらえることができる。異なる個体が全く同じ遺伝情報を持ち,生育環境も同一の場合,「かたち」は同一のものになるだろうし,遺伝,環境,もしくはその両者の要素が少しずつ食い違っていれば,各個体はそれぞれ異なる「かたち」を持つだろう。同じ生物種であっても,個体によって少しずつ様々な特徴が異なっているのは上述の理屈で説明がつく。また興味深いことに,遺伝,環境が異なることで生じた生物の「かたち」の違いは,その生物の行動をしばしば規定してしまう。ある昆虫のグループでは,体の大きさが主に幼虫時にどれだけ栄養を摂取したかという環境要因によって決まっており,体サイズに応じて個体の活動時刻が全く異なっているという例が知られている。また形態の微細な差異は活動周期の変異と関係するだけではなく,利用可能な餌資源を制