私が高校時代に習ったのは世界史ではなくて年表だった気がします。その年表すら十分に覚えることはできませんでしたが。 茂木:同じ事実を見ても、その解釈の仕方は幾通りもあります。その解釈の視点の一つが「リアリズム」という考え方に基づいて歴史を見る方法です。「歴史には正義も悪もない。生存競争を続けているだけ」とする歴史観です。地政学は「リアリズム」の一つで、地理的条件に注目して国家の行動を説明します。 学者や教科書の執筆者は自分の歴史観を示すのを嫌がる傾向があります。歴史観は多様なので、異なる歴史観を持つ人から必ず批判されます。それを恐れて、事実の羅列に終始するのです。 他の国の歴史教育も、事実の羅列にとどまる傾向があるのですか。 茂木:例えば米国には検定制度がありません。だから、教科書会社がそれぞれの歴史観に基づいた教科書を出版しています。日本への原爆投下を「仕方がなかった」と解釈する教科書があ