どういう事なの?と思った。 個々の自由を、希望を尊重する先生だったのに、わたしの役は男の子ばかりだった。 とにかくあなたはこれなの、と言って譲らなかったモダンバレエの先生。 ビートルズが大好きな老先生だった。キャアキャア騒ぐのではなく、静かな愛を感じたものだった。膨大にあるビートルズの曲に振り付けをして、大勢いる生徒たちに踊らせていた。 わたしに割り当てられる踊りは、いつも男児の役だった。そしてわたしは先生が大好きだった。とにかくあなたは男の子なの、と言って譲らない彼女に対して、疑問こそ抱いても、何故か反論する気にはなれなかった。 とにかくあなたは男の子なの。 他の生徒たちには何が踊りたいかいてくれるのに、わたしには、恐らくわたしにだけは別。彼女の感覚が優先されていた。 そして、それはとても珍しい事だった。 希望を聞かれないということ。あなたはこれ、とにかくこれなの、と相手に決められること