現代にいたるまでのドイツを中心とした社会思想を振り返るうえで、カントから出発するのはきわめて妥当なことだと思われる。カントが1795年に『永遠平和のために』で提起した「永遠平和」をめぐる議論は、20世紀後半から現在にいたるまで、大きな影響を与えているからだ。実際、私たちがこれからの世界の理想的なあり方について構想するとき、カントの「永遠平和」という理念は、指針として比類のないものだろう。現在、種々の困難を抱えながら進められているEU、ヨーロッパ連合の取り組みを思想的に導いているものも、まさしくこのカント的理念なのである。 とはいえ、まさしくカント以降の歴史に照らしてみるとき、カントの永遠平和という理念がたいへん皮肉な意味合いを帯びてくることも事実ではないだろうか。カント以降、およそ平和とは縁遠い二百数十年の歴史が続いたのであり、それはいまも変わらないからだ。永遠の平和どころか永遠の戦争と
リリース、障害情報などのサービスのお知らせ
最新の人気エントリーの配信
処理を実行中です
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く