EUは大企業に対して「森林破壊防止のためのデューディリジェンス義務化に関する規則」(EUDR)と呼ばれる規則を適用する予定だったが、現状では不可能な情勢だ。その最大の理由は、EUDRの強行によって食料品価格が高騰し、インフレ加速が再燃する恐れが大きいこと。環境規制を通してグローバルな影響力を行使するEUの戦略は岐路に立たされている。(土田 陽介:三菱UFJリサーチ&コンサルティング・副主任研究員) 欧州連合(EU)の執行部局である欧州委員会は規制を定め、それを域外に輸出し、グローバルな影響力を行使しようとする。域外の国や企業がこれを自主的に遵守するようになることは「ブリュッセル効果」と呼ばれ、近年では環境の分野で、欧州委員会はその効果が生じるように努めてきた。電気自動車(EV)シフトはその象徴的な事例だ。 しかし、EU自身がEVシフトを後退させつつあることが端的に示すように、ブリュッセル効