誤植と言えば、知る人ぞ知る『誤植読本』という本がある。著名な作家や学者、編集者が、誤植にまつわるエピソードを明かすエッセイ集だ。赤裸々に語られる本音の数々に、ついニヤリとしたり、同情したり……。同書の編著者である高橋輝次氏に、奥深き誤植の世界について聞いた。 もともと編集者時代に、誤植にまつわる苦い経験がたくさんあったんです。長年にわたって編集の仕事をしてきましたが、構成能力はちっとも上達しないんですよ。 ただでさえ校正能力に対するコンプレックスがあるのに、歳とともにさらに集中力や注意力に低下していく。これはもう、なかなか困ったものです。 僕は古本漁りが趣味で昔からよく古本屋をめぐっているんですが、そこでたまに誤植にまつわるエセッイに出合うんです。それがすごく面白くてですね。 変種うの仕事をしている人であれば、僕みたいに誤植にまつわる苦い経験をしている人も少なくないだろうということで、それ