年の差婚、バーチャル婚から仮面夫婦、やんごとなきご夫婦まで、さまざまな平成夫婦事情を、フィクション、生もの問わずトミヤマさんが考察した『夫婦ってなんだ?』を、『嫁へ行くつもりじゃなかった』の岡田育さんに書評していただきました。ご覧下さい。 六年前、結婚祝いで切子のペアグラスが届いた。とてもよい品だったが、台座のところに夫婦のイニシャルが削り込まれていたため、不燃ゴミの日に叩き割って捨てた。消せないお名入れさえなければ、きっと愛用しただろう。でも、今も昔も旧姓で活動する私は、新しい戸籍名の刻まれた贈り物がいきなり無言で届けられたことに、不気味さしか感じられなかった。青いほうに夫、赤いほうに妻の姓と名。なんでだよ、なんで他人が「色」を決めて勝手に「型」に嵌めるんだ。もしかしたら事実婚かもしれないと一瞬でも考えなかったのか? 本書のタイトルでまず思い出したのが、あの色違いのグラスである。因習を一