実在の女性哲学者の生涯を描いた独映画「ハンナ・アーレント」(マルガレーテ・フォン・トロッタ監督)が異例のヒットを記録している。上映している岩波ホール(東京・神保町)は連日の行列。大勢と異なる意見を発表し、脅迫や中傷を受けても声を上げ続けたアーレントの人生に、共感が集まっている。 (前田朋子) 「見方を貫き、変えない。マスコミが騒ぐとみんなワーッとそっちへ行っちゃう世の中だけど、彼女のような人は今の日本にも必要では」。作品を見終わった台東区の男性(69)は、感動した様子で話した。 アーレントは一九六三年、ナチス親衛隊幹部としてユダヤ人数百万人を強制収容所に送ったアドルフ・アイヒマンを「凡庸な人間」と描写、小役人のアイヒマンは思考を放棄して命令に従っただけ-との裁判傍聴記を発表した。