9月29日土曜日、その特急は、シュトゥットガルトを発車した途端に異常な揺れ方をし、突然、パタリと止まった。顔を見合わせる乗客。誰かが冗談で、「脱線!」と言った。20分も経ったころ、ようやく放送があった。車掌は当たり前のように言った。 「乗客の皆さん、私たちの列車は脱線しました」 こういう時のドイツ人の態度は特徴的だ。たとえショックを受けていても、顔色を変えることなく、「素晴らしい!」とか、「そう、それで?」というような皮肉なコメントを発する。この時もそうだった。 ドイツ鉄道で情報が流れないのは毎度のこと なぜ私がその光景を見たように語るのかというと、このハンブルク行の長距離列車に長女が乗り合わせていたからだ。駅を出て200mのところで後ろの3両が脱線した。列車が走っている最中にポイントを切り替えたのだとか。長女は後ろから5両目に乗っており、消防隊が救出にくるまでの1時間半、他のすべての乗客