作家であり脚本家であった向田邦子さんが一人暮しを始めたのは 昭和三十九年十月十日、東京オリンピックの開会式の日、三十五歳だった。東京都港区西麻布三丁目十七番地、昔の町名でいえば霞町。そして昭和四十五年、四十一歳のときに終の棲家となる東京都港区南青山五丁目一番地南青山第一マンションに越した。 忙しい中にも時間を見つけては散歩を楽しんだ向田さんは、つっかけ履きで、住まいの近所を歩き、日常の暮しのなかに四季を発見し、ここは私の縄張とばかりに次々にお気に入りの店を見つけていった。旺盛な野次馬根性、せっかちで、新しもの好きで、頑固で、自慢したがり屋。向田さんの散歩の風景には、向田邦子そのものの気質が見え隠れする。末妹の和子さんとともに向田さんが愛した南青山、西麻布(霞町、笄町)を歩いてみた。向田邦子の散歩道は、和子さんが姉との時間を楽しんだ記憶の風景でもあった。 文=向田和子 撮影:ヤスクニ 向田邦
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