中村桃子著 『女ことばと日本語』 「~てよ」「~だわ」といったいわゆる「女ことば」がいかに成立し、また現在に至るまで残り続けているのはなぜなのかが扱われている。 明治十二、三年ごろから女子学生の一部が「てよ・だわ・のよ」といった言葉を使い始めていたようだ。しかし、だからといってこれによって一挙に広まったわけではない。「むしろ、「てよだわ言葉」を女子学生の表象にしたのは、言文一致小説の書き手です。作家たちは、女子学生の登場人物に繰り返し使わせることで「てよだわ言葉」を女子学生の表象に作り上げていったのです」という状況があった(p.108)。 「女子学生が「てよだわ言葉」だけをいつも使っていたわけではないように、実際の言葉づかいはどの集団でも多様だったでしょう。むしろ、小説が、特定の集団に特定の言葉づかいを割り当てるという行為が、その集団と言葉づかいを結びつけていったと考えられます」(pp.1