「遠くに行きたい」(作詞:永六輔、作曲:中村八大)という歌がある。1962年にジェリー藤尾が歌ってヒットし、その後多くの歌手がカバーした。知らない土地をさ迷う心細さと新しい出会いの予感とを、やや寂しげな美しいメロディーに乗せて歌い上げる名曲である。 知らない土地を歩く心細さの幾分かは、自分が今どこにいるかが分からないことに起因している。ところが、いまや私たちはGPSを始めとした衛星測位システムをごく当たり前に使うようになった。スマートフォンにはナビが付くのが当たり前になったし、自動車もカーナビ標準装備が当たり前になった。「遠くに行きたい」の旅情は少し薄れたのかもしれない。 が、そもそも周りに何もない場所だったらどうだろう。旅情も何もあったものではなく、自分の位置がすぐに分かるということは死活問題となる。海洋を航行する船、上空を飛ぶ航空機、砂漠のただ中を行く自動車 ─── 衛星測位システムに