こんな話がございます。 平安の昔の話でございます。 当時、平貞盛と申すつわ者がございました。 これは後に権勢を極めることになる桓武平氏の三代目。 従兄弟である平将門の乱を鎮圧したことでも知られる猛将でございます。 さて、この貞盛が丹波守に任じられ、任地におりました時のこと。 何の因果か、体に悪い瘡が出来ました。 さっそく、都でも指折りの名医を呼び寄せて診させましたところ。 「これはお命を落としかねない重病にございます。児肝と申しまして、生きた胎児の肝を使わなければ、治ることはございません。一刻を争いますので、早く求めて薬となさいませ。ただし、決して人に知られてはなりませんぞ」 ト、申して屋敷を去りました。 これにはさすがの猛将も血の気が引いた。 それこそ、生き肝を抜かれたような心持ちになりまして。 大慌てで呼び出したのは、我が子である左衛門尉、平維衡(これひら)。 これは後に清盛らを輩出す
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