能に関するonboumaruのブックマーク (5)

  • 奥州安達原 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 平安の昔の話でございます。 京の都のさる公卿のお屋敷に。 名を岩手の局ト申す女がおりましたが。 この者は姫君の乳母でございまして。 我が仕える姫君を、それはそれは大事に育てておりました。 ところが、この姫君ト申しますのが。 生まれつき病に冒されておりまして。 五歳になっても一向にものを話しません。 岩手は姫君が不憫で不憫で仕方がない。 そこである時、易者にこれを打ち明けますト。 いつの世も易者ト申しますものは。 無責任な輩ばかりでございますので。 「まだ女の腹の中におるままの、赤子の生き肝をわせるより他にない」 ナドと吹き込んだ。 岩手は姫君が可愛くてなりませんので。 どうしても赤子の生き肝を手に入れたい。 その思いにすっかり取り憑かれてしまいまして。 生まれたばかりの娘を人に預け。 首には赤いお守り袋を掛けてやる。 「母岩手」ト書かれた形見の品。 「かかさまがお

    奥州安達原 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-
    onboumaru
    onboumaru 2019/06/14
    謡曲「安達原(黒塚)」より
  • 班女と梅若丸 隅田川 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 両国の地名にも表れております通り。 古来、隅田川は武蔵下総の国境いを成してまいりました。 この川を越えれば、その先はもう奥地でございますので。 都人から見れば、相当の辺境であったろうことは間違いない。 昔、在原業平ト申す都の風流人がございまして。 何の因果か、東国の地へはるばるやって来たことがございます。 泊まりを重ねてこの隅田川へ差し掛かった時に。 見たことのない鳥が飛んでいるので、ふと興味を覚えるト。 「あれは都鳥と申す鳥でございます」 ト、渡し守が答えたのを受けて。 ――名にし負はば いざ言問はむ 都鳥 我が思ふ人は 有りや無しやと (都を名乗るのならあの鳥に尋ねてみよう。私の想い人は無事に暮らしているのかと) 左様な歌をつい詠んだのも、都人には東国行が。 それだけ侘しさを催すものであったからでございましょう。 さて、とある春の閑日でございます。 風がのどかに

    班女と梅若丸 隅田川 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-
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    onboumaru 2017/02/15
    謡曲「隅田川」より
  • 砧(きぬた) | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 足利時代の話でございます。 筑前国の芦屋ト申すところに、何某という男がございました。 この男は、訴訟のために京に上って、はや三年が経っておりました。 この頃の訴訟というのは、大抵が武士同士の土地を巡る争いでございまして。 所領権を巡って諍いが起こりますト、将軍家に訴えて仲裁をしてもらいます。 ところが、こうした諍いはあちらこちらで起きておりますから。 ひとたび訴えを起こしましても、裁決が下るまでに相当の時間がかかります。 故郷にはが寂しく待っている。 何某は気がかりでなりません。 しかし、訴訟はなかなか終わりそうにない。 そこで、連れて来ていた侍女の夕霧を先に返しまして。 ともかくも「今年の暮れには必ず帰る」旨を伝えさせることにした。 夕霧は少女の身ながら、京から筑紫まで一人で旅を続けまして。 ようやく、秋の終わりに芦屋の里へたどり着きました。 すでに陽は傾きはじ

    砧(きぬた) | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-
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    onboumaru 2016/07/19
    世阿弥作の謡曲「砧」より
  • 道成寺 安珍と清姫 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 紀州の道成寺(どうじょうじ)は古いお寺でございます。 大宝元年の創建ト申しますから、奈良の都より歴史は古い。 この由緒ある道成寺に、かつて曰くつきの鐘がございまして。 二度に渡る消失により、残念ながら今は残っておりません。 二度目の消失は、信長の焼き討ちによるものでございますが。 一度目は何が原因かと申しますト。 それが、これからお話する安珍清姫の物語でございます。 醍醐天皇の御代、遠く奥州より毎年、熊野権現に詣でる山伏がおりました。 名を安珍(あんちん)と申し、若くまた優れた美貌の持ち主として知られておりました。 道成寺はその熊野への途次にございまして。 寺の近くに、真砂の庄司ト申す者が住んでおりました。 庄司には可愛らしい娘が一人おります。 それが、名を清姫(きよひめ)と申す幼な子で。 安珍はこの庄司の家を、毎年、宿にしておりました。 ですから、清姫のことは小さ

    道成寺 安珍と清姫 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-
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    onboumaru 2016/06/24
    謡曲「道成寺」より
  • 野守の鏡 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 ある春の初めのこと。 出羽国は羽黒山の山伏が、大和の葛城山へ向けて、尾根伝いに修行の旅に出ました。 大和国に入ると、春日という里がございます。 そこに大きな池があるというので、憩いがてら立ち寄ってみることにいたしました。 教えられたとおりに歩いていきますと、やがて広い野原に出ました。 その真ん中にぽっかり穴が空いたように、確かに池がございます。 水面は穏やかで波打つこともまるでなく、水は清く澄みきっております。 まるでよく磨き上げられた鏡のよう。 山伏は池の畔に腰掛けまして、旅の疲れを癒やしておりましたが。 池の水のあまりに清らかなのに心を奪われ、そっと覗いてみますト。 陽の光を受けて、水のおもてはまさに鏡のように輝いている。 身も心も我知らず、いつしか吸い込まれていきそうな心持ちになりました。 ト――。 「もし」 不意に声を掛けられて、山伏はハッと我に返りました。

    野守の鏡 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-
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    onboumaru 2016/06/07
    世阿弥作の謡曲「野守」より
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