こんな話がございます。 平安の昔の話でございます。 在原業平(ありわらのなりひら)ト申しますト。 ご承知の通り、色男の総元締めみたいな嫌な奴で。 生まれは高貴にして、容姿は眉目秀麗であるばかりか。 美女に目がなく、狙った獲物は必ず手に入れるトいう。 天照大神に仕える伊勢斎宮でさえも。 神前にて潔斎中の身でありながら。 コロッと落ちてしまったトカ申します。 なんとも罰当たりな男でございますナ。 さて、この色男の業平にも。 肝をつぶす出来事がございまして。 ようやく我々も溜飲を下げられる。 これこそバチがあたったのだトモ申せます。 なにせ、このときモノにしようとした相手と申しますのが。 伊勢斎宮に勝るとも劣らぬお方でございまして――。 あるとき、右近の中将在原業平朝臣は。 ある人の娘が絶世の美女であると耳にした。 そうなるト、居ても立ってもいられないのが色男。 さっそく、あれやこれやト言い寄り
![業平と芥川の人喰い倉 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-](https://cdn-ak-scissors.b.st-hatena.com/image/square/8c39dd87919cf879fc02ff0abb667f298b95562a/height=288;version=1;width=512/https%3A%2F%2Fonboumaru.com%2Fwp-content%2Fuploads%2Fyoshitoshi-36kaisen-sadanobu.jpg)