群像新人文学賞評論部門受賞作、武田将明氏の「囲われない批評――東浩紀と中原昌也」を読んだ。実はこの二人は、僕が個人的にもっとも敬愛していると言ってもよい文芸評論家と純文学作家であるために、受賞作決定のニュースを見たときに「やられた」と思ったものでした。そのために並々ならぬ関心を持って読み始めたのでした。 内容は大きく分けて三つ、東浩紀「ソルジェニーチン試論」論、中原昌也「点滅」論、そして批評論、この三つが「確率」という「事実性」をブリッジにしてつながっていく。むしろ、批評がどう可能であるのかを問うためにこそ東と中原が召還されているかのようだ。 「ソルジェニーチン試論」の矛盾を炙り出す読みの手腕はすごいと思った。「論理的な体裁の文章に、ノイズのように非論理が軋みをたてている」。これを東のデビュー作に見出す。「しかし注目すべきは、この最初の論文において、東浩紀はある種の批評がむしろ非論理を志向