第11回「先生、ジュテームは日本語でどう言いますか」にも書いたけれど、日本語と英仏語の発想の違いを表す典型的な文は「好きだよ・好きよ」だと思う。手を握られてこう言われたら、「そう、さっきの映画、そんなに気に入ったの」と答える日本人は先ずいない。 当然、英仏語なら「I love you」「Je t'aime」と、双方「誰かさんと誰かさん」が人称代名詞で登場する場面である。ここで重要なのはこれらが英仏語では不可欠であるということだ。つまりこの二人が出て来ないと文にならない。一方、日本語の「わたしはあなたを愛しています」は、翻訳機械が吐き出したような悪文だ。実際にはあまり使われないのがその何よりの証拠である。 何故悪文かと言えば。日本語の「基本文」には、国語の時間にはそう教えられるが、実は、「主語」や「目的語」が不要だからだ。 そもそも日本語には「人称代名詞」という品詞は不要であって、日本語では