野村證券経済調査部長 美和 卓 いわゆる「ゼロコロナ戦略(厳格な感染症対策)」解除後の中国経済の持ち直しの鈍さに直面し、中国経済の「日本化」懸念が高まっている。すなわち、中国経済の回復遅れが単に循環的な問題ではなく、人口動態の転換や国内資産市場の調整を背景とした構造調整の始まりを意味するものであり、中国が、1990年代以降日本経済が経験した長期停滞と同様の途を歩む入口に立っているのではないか、との懸念である。では、仮に中国経済の「日本化」が生じつつあるとして、それは世界経済やグローバル金融資本市場にいかなる意味を持つものであろうか。90年代以降、日本経済の「失われた30年」が与えた影響と比較しつつ概観してみよう。 世界の実体経済への影響を考える際、中国及び90年代までの日本がいずれも貿易・経常収支の黒字国であることが出発点となる。これは、双方が、世界経済の最終需要地であるというよりも、工業