撮影/中島正之 篠田節子さんの新刊は戦時中、現代、近未来と日本人の様相を見据えたすさまじい長編ミステリー。数々の謎を追うスピーディな展開に、寝食を忘れて没頭するはず。 「肥大化した欲望の先には一体何があるのか。そこを探ってみたくて」 『失われた岬』 KADOKAWA 「謎の場所や得体の知れない何かに心惹かれます。それで、自分に近い人が病気や死ではない何かに奪われていくというシチュエーションを、SF的解明ではない手法で書いてみたい、そこに滅びゆく文明や産業問題、資源戦争といった視点を結びつけたいと考えました」 篠田節子さんは新刊『失われた岬』を執筆したきっかけについて、そんなふうに語り始めました。 「北海道の方から“本州は自然と人間が住む間に里山など緩衝地帯がある。でも北海道は人が住むところは人が住むところ、自然は自然と、その差は絶対的で全く違う”と伺い、小説の舞台を探して知床や増毛町など北