そのとき、まだ5歳だった。 弟と外に出かけると、知らない人からジロジロと見られた。「弟の分も、お姉ちゃんが頑張ってね」と言われた。将来はあの仕事に就くんだと、当たり前のように思われていた。 私よりも弟や親のほうが大変なのだから「嫌だ」と言ってはいけない。そう思っていた。 私は、“自由”に生きてはいけないの? 藤木和子さんは、1982年に埼玉県上尾市で長女として生まれた。 藤木さんの人生を大きく変える出来事があったのは、それから5年後のことだった。 3歳年下の弟に、聴覚障害があることが分かったのだ。 それから、母親は弟につきっきり。 母親と弟が病院や療育に行っている間は、父親の職場で大人に囲まれながら長い時間を過ごしたという。 「弟の分も、お姉ちゃんが頑張ってね」 周りの大人からそう言われたのは、1度や2度ではない。 学校や塾でよい成績をとったとき母親から言われたのは「こんなにできなくても…