小笠原博毅(神戸大学教授)インタビュー サッカーファンの間で弄される「サッカーに政治を持ち込むな」という警句。一方でW杯が開催されているカタールの労働環境が取り沙汰されたり、BLACK LIVES MATTERへの連帯を示す膝つきジェスチャーが試合前に行われたり、戦争を起こしたロシアの国際試合参加が禁止されたりと、社会問題がスタジアムやピッチに見え隠れしているのは紛れもない事実だ。この一見正論に聞こえるフレーズの下で単純化されている、サッカーと政治が織りなす複雑な関係について、神戸大学でカルチュラル・スタディーズを研究する小笠原博毅教授に話を聞いた。 ※『フットボリスタ第92号』より掲載。 サッカーは世界を1つにしない ──「サッカーに政治を持ち込むな」という警句があります。このフレーズに対し、どのような考えをお持ちですか。 「『政治を持ち込む』と言う時、そこには持ち込む主体が想定されてい